うどん県うんどう会 人物図鑑 Vo.2 今井航一さん(香川県パラカヌー協会)

(写真 左:今井航一選手、右:赤山僚輔)

 

うどん県うんどう会インタビュー企画第二弾!!

今回は坂出市在住、三豊市高瀬町を拠点に活動しているパラカヌー日本代表の今井航一選手にZoomを通してお話を伺いました!

パラカヌーを始められた経緯から、現在東京オリパラが延期され、現在の心境とは。


赤山:今回はうどん県うんどう会の人物図鑑第2回目として、パラカヌー日本代表であり、香川県パラカヌー協会会長としても活動しておられます、今井航一選手にお話を伺ってまいります!今井選手、よろしくお願いいたします!

 

今井選手:よろしくお願いいたします!

 

赤山:それでは簡単に自己紹介をお願いいたします。

 

今井選手:香川県パラカヌー協会で選手兼会長をしております、今井航一と申します。私がカヌーに出会ってから3年ほどなのですが、始めた当初は今のような状態でやるとは思っていなかったのですが、直近の目標としては東京2020パラリンピックを目指してカヌー競技に取り組んでおります。

 

赤山:現在のお仕事と活動内容について、教えていただいてもよろしいでしょうか?

 

今井選手:現在の職業は、自分の中では、カヌー選手と鍼灸あんまマッサージ師、両方という感じで、時間的にもそのような半分でやっているような状況です。鍼灸あんまマッサージ師は実はそんなに経歴は長くなく、今から7年前に悪性肉腫という病気になり、その時に足を失いました。当時は営業職に就いており、復帰なども考えたのですが、闘病生活の中で色々と考える中で、仕事を変えようと思いたって、今の仕事に結びついています。

当時病気をした時は広島に住んでいたのですが、鍼灸あんまマッサージ師の国家資格に備えられる学校が香川県宇多津町にある四国医療専門学校が一番近くであったので移住しました。そこで3年間学校に通い、2017年3月に卒業し、実際に開業したのは2017年8月になります。ちょうど同じ時期にカヌーに出会って、早い段階でパラリンピックを目指そうという気持ちがでてきたので、両方やってきたという形ですね。質問の答えとしては、カヌー選手メインの鍼灸あんまマッサージ師という形ですね。

 

赤山:カヌー競技を始められたきっかけを教えていただけますか?

 

今井選手:闘病して足を失った時、どうしても運動量が少なくなってしまうなというのがあったので、健康管理の一環で何か運動をしたいなと思っていました。最初は水泳から始めて、香川に移ってからも水泳を続けていたのですが、宇多津と坂出の境目にある角山温水プールで現在の妻(水泳教室をしている)と出会いました。その妻が昔カヌー選手だったという話を聞いていました。出会った当時は水泳に熱中していたのですが、全国障害者スポーツ大会などでそこそこの成績を残せたので、別のスポーツをやってみたいなという思いがでてきて。「そういえば妻がカヌーをしていたな」と思い出し、そこで初めてカヌーに触れました。あれは2017年の10月でしたね。

 

赤山:最初の印象はどうでしたか?

 

今井選手:最初に乗った艇(てい)は遊園地や公園にあるような、安全で誰でも乗れるようなタイプの艇だったで、ただただ水の上で楽しいなという感じでした。その艇を乗らせていただいた場所には、高瀬高校のカヌー部や高瀬区学のカヌー部があったりして、傍らで速そうなカヌーに乗ってかっこよく進んでいる学生たちを目にして、あっちに乗ってみたいなと思いました。実際乗らせていただくと、乗った瞬間に落ちてしまい、競技カヌーってこういう乗り物なんだ、と大変さを実感しました。

 

赤山:ちなみに、乗り物は元々好きというのはあったのでしょうか?

 

今井選手:いえ、それはあまりありませんでした。実家近くではボート部の練習をする光景を見て「気持ち良さそうだな」とは思っていましたが、実際始めてみると想像以上に体力も使うし、過酷なスポーツだなと思いました。

 

赤山:ちなみに、水泳の前は何かされていたのですか?

 

今井選手:剣道をしてました。小中学校と社会人になってからトータルで16年くらいやっていました。最初に入った会社の上司が剣道をやっている人で、ある日突然呼び出されて、道場に連れて行かれて、その支店を離れるまでやっていました。(笑)

学生までは初段までしかとっていなかったのですが、再開してから3段まで取得しました。

 

赤山:そうなんですね!その時も道具は使っていますね!

 

今井選手:確かにそうですね!笑

 

赤山:ちなみにですが、今日はこのTシャツを着ています!(香川県パラカヌー協会がクラウドファンディングをした際の返礼品Tシャツを見せる)

 

今井選手:あー!ありがとうございます!

 

赤山:(Tシャツにも説明の図があるのですが、)知らない方もいると思うので、カヌーとボートの違いを簡単にご説明いただけますか?

 

今井選手:まあ、正直ボートのことを知らないので、詳しくは説明できないのですが、そもそもカヌーというものをイメージできない人が結構周りにいたんですよね。「カヌーやってるんだね」という話をしながら、ボートの動きを必ずされるんです。(笑) というところもあって、ボートは背中の方向に進んでいき、カヌーはお腹の方向に進んでいくんだというのをとりあえず知ってもらいたくて、そのTシャツを作りました。

ちなみに、ボートに関して、交流が無く詳しくは知らないのですが、カヌーも手で漕ぐだけでなく脚を使うのですが、ボートはカヌー以上に脚を使うスポーツだそうです。また、カヌーもボートも変化する水面の上で行う競技なので自然環境に左右されるところが多いスポーツですね。

 

赤山:カヌーは複数人ですることもあるのでしょうか?

今井選手:健常者の競技では、ペア(2人乗り)とフォア(4人乗り)がありますが、障害者の競技はシングル(1人乗り)のみとなっています。

 

赤山:急流を漕いでいくものは、あれもカヌーですか?

 

今井選手:そうですね。カヌーの中でも、急流の中でゲートを通過しながら速さを競うスラロームという競技です。今私たちがやっているのはスプリントカヌーと言って、静水の中で直進でタイムを競う競技です。静水と言っても天候のひどい時は波風がすごい時もあるのですが。(笑) 基本的には湖や池などの流れのないところで200m,500m,1000mなどの速さを競います。ただ、パラカヌーは今のところ200mという競技しかないです。瞬発力と、200mとはいえ持久力も要します。

 

赤山:パラカヌーを始めて、やりがいや楽しさを感じる瞬間ってどういう時に感じられますか?

 

今井選手:やりがいに関しては、やることが山積みで、(それをクリアしていくことが)やりがいかなと思うのですが、さっきもお話しありましたけれども、カヌーってまず身体があって、漕ぐためのパドルがあって、カヤックがあって、変化していく水面や風があって、その大体4つぐらいの要素をコントロールしながらいかに速く進むかということを考えなければいけないので、本当にやることが盛りだくさんで。特に障害者のカヌーは、さらに自分の身体が欠損しているという特徴があったりするので、その要素が加わってきます。障害は人によって千差万別ですが、私の場合は左足の大腿部半分を切断しているので、一番今ネックになっているのは、左右のバランスですね。まっすぐ船に乗ること自体が難しい。そんなアンバランスな状況の中で競技をしていく、というところに関して、山ほど考え、練習しなければいけないので、それを1つ1つクリアしていくというか、少しずつ進歩していくと言うのがやりがいですね。

 

例えば、自分のカヌーのシートに脚をくくりつけることで固定させて上手く力を艇につたえられるようにするなど、シートをスタッフやご協力してくださる企業様と一緒に作ったりするために沢山話し合いをしたり。そういった一つ一つがやりがいに繋がっています。また、大きな大会にもどんどん成績を残していきたいということもあるので、道具だけでなく、フィジカルの面でもよりそういうところに行けるものにしていかなければいけないので、日々の積み重ねというのもやりがいを感じながらやっているという状況ですね。

 

赤山:そのような沢山やることがあるという中で、ある程度時間が必要になってくることもあると思います。今井さんは競技歴が3年弱ということですが、ライバルや目標選手はどれくらい経験年数があるのでしょうか?

 

今井選手:これは本当に色々な人がいるので、バラバラですね。障害者のカヌーは障害の程度によってL1~L3という3つのクラスに分かれます。本当はもう少し細かくクラス分けする必要があると思うのですが、全体の競技人口がまだ少ないこともあり3つだけなのです。私はその中でも一番程度の軽いL3というクラスになります。同じクラスになると一番長い人だと20年くらいされていますね。先天性で小学校時代からされていたり私より2、3年早く始めたという方もいます。私より先輩になる選手が9割です。人生の中で障害を負ってしまったという選手は競技人生は比較的短めですね。

 

パラカヌーを日本で普及しようという動きになって日本の障害者カヌー協会ができたのもそんなに長くはないので、比較的他の競技よりも競技歴が長い人が少ないですね。

 

実際、カヌーに関しても、パラリンピックの正式種目になったのも前回のリオ大会からなので。

 

私の場合は、カヤックとバーという2種目やっているのですが、バーに関しては、今回の東京大会から正式種目になったものですね。世界大会などは以前からあったのですが、パラリンピックの種目になるのが最近ということで、まだまだこれからですね。

 

赤山:今こういった勝負の世界に身を置かれていますが、今井選手にとって、勝負に挑むための準備や大切にしていることがあればお伺いしたいです。

 

今井選手:そうですね、いざ勝負の瞬間になったときにはほぼ勝負は決まっていると私は思っています。もちろんその場の突発的なことで結果が変わることももちろんあると思いますが、大半はそこに至るまでに自分がどれだけのことをできたかだと思うので、1日1日細かいことの積み重ねが勝負の世界で大切なことかなと感じています。1つ1つの動作や行動も大切だなと思います。もう一つ、これは勝負の世界に限ったことではないかもしれませんが、去年小中学生で講演会をさせていただく機会をいくつかいただいたのですが、「言葉を大切にしよう」ということを毎回お伝えてきました。行動する前にまず思いが自分の中にあると思うのですが、その思いを言葉にして、そして行動に移す。という繰り返しが日々を作っていると思いますし、勝負の準備をするにも、そういうサイクルを毎回繰り返していると思うので、簡単に言えば、前向きな言葉や明るい言葉を日々意識するということが、勝負に対しての心構えとしては大事なのかなと思いますね。

 

赤山:自分の言葉は自分が一番聞いてますし。

 

今井選手:そうですね。記憶が定かではないのですが、中学時代、剣道をしていたときに、ある高校の剣道部を日本一に導いた監督が「嘘をつかないこと」を部員に課しているという話を聞いたことがあるのですが、これは、「すっきりした心の状態でいること」が勝負に挑むに当たって大切なことだということなのだろうと思います。何か心に引っかかるようなこと、後ろめたいことなどを完全に排除することは難しいとは思いますが、勝負事に挑むに当たっては、そういう要素は極力減らしておきたいですね。

私の場合は、そういう「すっきりした心の状態」を作るための一つのツールとして、先ほど言った言葉を重要視しています。そして、実際にそれを行動に移せるかどうかが重要だと思います。1つ1つの行動は小さなことだと思いますが、それらが結果に繋がっていくと思うので、意識していますね。

 

赤山:そうですね。結果を残した指導者に聞けば聞くほど、当たり前のことを凡事徹底することや勝利勝敗の神は細部に宿るというが大事だと感じます。

ちなみに、勝負飯などはあるのですか?

 

今井選手:勝負飯は特にないですね。(笑)

赤山:験を担いだりすることはありますか?

 

今井選手:えーと、あるかなあ。(笑)験担ぎというのかわかりませんが、僕はスタートラインについた時、片手を水につけて、水の神様に祈りますね。(笑)

 

赤山:これは質問とは関係ないのですが、一緒に活動する指導者やトレーナーと、世界で勝つ時に大事な価値観として宗教観の話をすることがあって、最後の最後土壇場において、一神教の国、ほどんどイスラムかキリストなので、彼らの信じる力というのは、仏教というよりも無宗教が多い日本の信じる力の違いが大きく異なるんですよね。それがいい悪いではなく、そういう選手を相手にするということを知っておくことを10代の選手に伝えたりするのですが。日本でも祈りの文化というのはそんなに珍しくはないですが、単なる祈りではなく、どこに向かって祈るのかというのが(大事だということは)あると思うので、面白いなと思って僕も宗教の勉強をしていっています。

 

今井選手:日本人の多くが行なっていると思われる、八百万の神に祈るような、「漠然とした神聖なものに祈る」という考え方もいいとは思いますけど、そう言われるとそうですね。諸外国の選手たちはそういうバックグラウンドが違いますもんね。

 

赤山:すみません、質問とは関係ない話をしてしまって。またぜひゆっくりその辺りのお話もできれば(笑)

それでは、次の質問ですが今後の目標や方向性を教えてください。

 

今井選手:直近の大きな目標は東京2020に出るということでしたが、コロナの影響で延期になって、今は自分にとってそれはよかったと思うようにしています。開催はどうなるかわかりませんが、自分の中では、東京大会に向けて、最大限の準備をしていきたいと思っています。年齢的にも今46歳で次のパリを目指すとなると50歳なので、厳しい面もあるとは思いますが、そこまで自分が知恵を絞ってやりきれるか挑戦したいというところもあるので、肉体の衰えは避けられないのかもしれませんが、パリ大会を目指してやっていきたいと思っています。自分が障害者の選手として活動している中で、障害を抱えた選手と出会います。彼らは障害と向き合いながらカヌーが好きだから続けていたり、高みを目指しているという選手なのですが、肉体面での悩みを抱えている選手が多いという事実もあります。

私は、選手としてのに区切りをつけたら、鍼灸あんまマッサージ師という立場で、選手たちがより競技に打ち込めるようにサポートする役割もできるようにしていきたいですね。

 

赤山:両方やっているからこそ、競技の先にあるそのような目標に向かって突き進めるのでしょうね。

 

今井選手:そう願います。(笑)

 

赤山:先日直接お身体をみる機会がありましたが、身体自体はまだまだこれから変わっていきそうな印象を受けました。

 

今井選手:そうなるように努力はしています(笑)

 

赤山:僕の仲間のトレーナーも46歳で、どんどん身体操作のレベルとパフォーマンスが上がっていて、僕は今38歳なんですが、そういう仲間を見ると、僕もまだまだ変わっていけると嬉しくなります。

 

今井選手:それは嬉しい情報ですね、ありがとうございます(笑)

 

赤山:瞬発系オンリーの競技だと確かに限界がありますが、現在のカテゴリーであれば、楽しみながら(まだまだいけそうですね)。

 

今井選手:まだまだ頑張ります(笑)

 

赤山:楽しみにご活躍祈っております!

さて、話は変わりますが、香川県に移住してきて、香川県のいいところや他県との違いを教えていただければと思います。

 

今井選手:香川県は面積が一番小さい県だと思いますが、自分も移住してきた当初、すごくコンパクトな街だなというイメージでした。山も川も海もすぐ近くにあり、自然に囲まれていて、人と人との距離も比較的近く、田舎ならではというところもあるかもしれませんが、アットホームさを感じます。そういったところは、今香川県パラカヌー協会を立ち上げて活動しているというところや、一人のカヌー選手として知っていただきたいという思いもある中で、親しみを込めて関わってくれやすい土壌があるのかなと思います。今までお会いしてきた方々は少なくともそういった方が多かったので、そのような居心地のよさや温かみを感じています。

 

赤山:逆に伸びしろというか、ここはちょっと香川がんばって、というところがあれば(笑)

 

今井選手:私が今まで関わってきたところに限られるかもしれませんが、狭いエリアでアットホームなところがある反面、逆に閉鎖的なところもあるのかなと多少感じるところもあります。そこは紙一重というところというのもあると思いますが、香川はいいところなので、もっとオープンになってもいいところは自由な発想でオープンになってもいいのではないかと思います。そうすることで、もっと香川の魅力をもっと高めることができると思います。

 

赤山:ありがとうございます。僕自身も地元出身ですが、県外に出てから戻ってくると、良いところと悪いところを感じることがあるので、香川のことを知るため、知ってもらうためにいろんな方にお伺いして発信できればと思っています。

 

また、香川県の選手や指導者のことを色んな方に知ってもらえればと思っています。

やはり応援の力は大きいので、一人でも多くの方に知ってもらってファンになってもらって、試合がある時に(応援してもらえる)というのが、サポートしている選手の力になるのを目の当たりにしているので、この対談もそういうきっかけもになればと思います。

 

今井選手:ありがとうございます。

 

赤山:本日はお忙しい中お時間をとっていただき、ありがとうございました。

 

【プロフィール】

今井航一 選手

香川県パラカヌー協会 代表
2020年度パラカヌー日本代表選手
2020年度香川県障害者スポーツ強化指定選手

鍼灸按摩マッサージ師

大腿部を失ってからカヌーを始め、約2年で日本代表選手に。
パラリンピックを目指し、また、
香川で誰もがカヌーをできる環境を作るため県内で活動中。

 

 

赤山僚輔

LibreBody GM
JARTA 統括部長
日本オリンピック委員会強化スタッフ(医科学スタッフ)
香川県バスケットボール協会医科学委員
香川県空手道連盟専任コーチ

 

 

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